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冬と春
赤々舎
2022年6月
68ページ
255 × 192mm
ハードカバー、表紙デザイン2種
デザイン:須山悠里
テキスト:鈴木理策
印刷製本:株式会社ライブアートブックス(株式会社大伸社)
プリンティングディレクション:平田浩二
進行:清水チアキ
ISBN:978-4-86541-148-5
「White」「Sakura」「Water Mirror」の未発表作品により、シークエンスで構成した写真集。
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言葉で「冬」と「春」と表す時、両者は異なるものとされ、その間を区切ることもできる。けれど、季節の移ろいに切れ目はなく、時は間断なく流れ、続いていく。写真で写すことができるのはシャッターを切る僅かな時間の世界の在りようで、その時の世界が、ただそうであるという姿で残っている。それぞれの写真は多くを語らないが、それらを並べていくと、つながりと間合いがうまれる。そのあいだをどうつなぐかは、本を見る人に預けてみたい。
断片と断片をつなぐ私たちの意識の流れ。見ている中で意識が立ち上がったところが深く記憶されること。私たちが「いま見ていること」と「思い出していること」は分けがたく、現在と過去は重なり合う。このことは写真を見る経験と似ていると思う。
撮影者の経験は、写真の中で見る側の記憶と溶け合う。この本はページとページのあいだを見る人に託している。
— 鈴木理策『冬と春』収録テキストより