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〔個展〕知覚の感光板

キヤノンギャラリーS (東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1F)
2018年11月28日(水)~2019年1月16日(水)
休館日:日曜・祝日、年末年始(12/29-1/6)
開館時間:10:00am-5:30pm

ギャラリートーク 12月8日(土)午後3時より
ゲスト:日高理恵子(画家)さん
会場:キヤノンギャラリーS
定員:50名
要予約:申込フォーム

キヤノンギャラリーwebsite

 


 

知覚の感光板       鈴木理策

「知覚の感光板」は画家セザンヌの言葉です。

芸術は自然に照応するひとつの調和であり、そこに芸術家個人の表現意図を持ち込むべきではない。自分の中にある先入観を忘れ、ただモチーフを見よ。そうすれば、知覚の感光板に全ての風景が刻印されるだろう、と語るセザンヌは、芸術家の身体を感覚の記録装置とみなし、受け取った全てを画布に定着させようと試みました。匂いや音など視覚以外の感覚も色彩によって表すことができると信じ、「目に見える自然」と「感じ取れる自然」が渾然一体となるように描いたセザンヌの絵画は、「何を描いたか」ではなく「モチーフから感じ取ったもの」そのものを私たちに見せてくれます。

写真の場合、カメラは表現意図を持たず、ただ純粋に対象を知覚します。カメラの機械的な視覚は、人間の見え方とは大きく異なります。私たちは行動に必要な情報だけを取捨選択してものを見ているからです。カメラの純粋知覚は私たちが見捨てた世界の細部をも写し出してしまう。その基本的な性質にあらがうように、多くの写真家は構図やフォーカシング、シャッタータイミングの選択を駆使して、画面の中に自らの刻印を残そうとしています。

今回、近代の画家たちがモチーフに選んだ土地を撮影しました。彼らが向き合った風景を訪れると、その創意を直に感じられるようでした。この旅の中で、レンズの純粋さを信頼し、写真の本性を手に入れられたらと、改めて強く感じました。